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第5話 『勧められるまで酒もタバコも・・・』(韓国編)

 電車やバスの座席はどんなに混雑していても必ず譲ってくれる。その上、席を譲ってもらったお年寄りもごく当然といった顔つきで泰然と座っている。日本のシルバーシートが若者たちに独占されているのとは正反対の現象である。

 目上の人や年配者の前で、勧められるまでは酒やタバコを控えるのも儒教文化の1つであろう。もし、目上の人から「一杯飲みなさい」「一服つけなさい」と言われると、杯をささげ持ち、あるいはタバコを押しいただいて、横を向いたり、後ろを向いたりして口をつけるのである。この礼儀正しい振舞い方に、外国ビジネスマンの多くは感動を禁じえないようだ。

 そして、
「彼はいいよ。なかなか礼儀正しいし謙虚だよ」という評価につながるのである(もっとも、この評価基準は間違いのことも多いが・・・)。

 韓国は、血縁をこの上なく大事にする国だ。それゆえ、一族の年配者には小遣いや生活費を若者たちが届けるという週間がある。一般的には、年に一回、ゆかりのあるお年寄りを訪ね、給料のうち1割程度の現金を手渡す。あるとき、友人が一族の長老を訪ねるというので、日曜日のドライブ感覚で連れて行ってもらったことがある。

 友人は、長老に対し「健康で何よりです」とあいさつし、現金の入った封筒を捧げるようにして手渡した。上座に座っていた長老は、「来月も頑張って働きなさい」「妻や子供も大事にしなさい」「韓国も国際的になってきたから、これからも外国語の勉強に励みなさい」と言いながら受け取り、「台所に寄って、茶を飲んで帰りなさい」と言うと、早々に奥へ引き揚げていった。

 日曜日になると、血縁者の多い少ないはあるものの、2~3人ずつが訪れて、このようなご機嫌うかがいの儀式が繰り返されているという。年金制度の完備していない韓国では、このように儒教文化がお年寄りの生活を支えているのである。

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