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第2話 『日本語の命令で芸をしたロシア犬 』(日本編)

  日本の近代馬術の祖・遊佐幸平が、レニングラードの貴婦人の家に下宿していた友人を訪ねると、そこに見事なスピッツがいる。友人は「この犬はマダムが命令するといろいろな芸をよくやるが、ロシア語の発音が悪いせいか私の言うことはさっぱりきかない」とぼやく。遊佐はそれを聞くと、「ナーニ、そんなことはわけないよ。マダムが芸をさせてみせてくれたら、私が日本語で同じ芸をさせてみせる。」そんなバカな・・・と思いながらも友人は、とにかくマダムに実演してもらった。

 その結果は?
・・・・・スピッツは遊佐が命ずるままに、マダムにやってみせたとおりの芸を正確に演じたのである。友人もマダムもビックリ仰天、遊佐はマダムから非常な尊敬と歓待を受けたのだった。
 
 さて、そのタネアカシ。彼はただ、マダムの声の調子と身振りを真似しただけなのだ。動物は主に命令者のその2つの要素から意味を判断するのであり、言葉なんかロシア語でも日本語でも中国語でもなんでもかまわないということを、遊佐は馬の訓練を通じて見抜いていたのである。

 ここである。アマと、本物のプロと言われる人達との“目のつけどころ”が違うのは!動物も人間も、その行動の本質には大いに共通するものがある。そうしたいわゆる物事の「本質」を見落とすと、目の前の光景に気を取られて、前を見ているつもりが後ろをみている“カエルの経営者”になる。そうなっては大変である。ここはひとつ遊佐幸平の英知に学んで気合を入れ直し、ウマやイヌを・・・ではない、交渉相手の人間様を自在に動かす“目のつけどころ”をつかむ「目」を、大いに養ってもらいたいものである。

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